“読書の秋”ということで、より一層読書欲が高まっていた筆者。
書店のフェアが賑わい、電子書籍のセールなども多いこの時期は、良い本と出会えるチャンスの季節でもあります。
そんな本好きである筆者が、普段読書系の配信を行っているVTuberのみなさんに、おすすめの本を紹介してもらいました!
ご協力いただいたのは天木柚季さん、栞さん、書三代ガクトさん、夢ノ語部さんの4名です。皆さんそれぞれ得意なジャンル(好きなジャンル)が違うので、多種多様な本が集まりました。
選書のルールは以下の通り。
選書のルール
・一貫したテーマを決めて選ぶ
・ジャンルは不問(Web小説や漫画アプリも含む)
・上限は5冊まで
みなさんにオススメしてもらうだけでは申し訳ないので、筆者も各テーマに合わせて1冊ずつ選んでみました。
それでは早速、各々のおすすめ本を紹介していただきましょう!
・天木柚季さん
天木柚季さんは“本好き司書系VTuber”。
朗読会や読書会、雑談配信や、ゲーム配信も積極的に行っているVTuberさんです。
【天木柚季さんからから一言】
10月23日に「推しのルーツが知りたい」という企画を行います。
本が好きな方の、今まで読んできた本が知るということはすなわち、ルーツを知ることができるのでは!?
総勢30名にお声をかけさせていただきましたので、参加者のルーツをぜひ一緒に見ていきませんか?
【選書のテーマ】
秋の夜長に読みたい本
1.『九つの、物語』橋本紡/集英社
兄の部屋で本を読んでいたゆきなの前に突然現れた兄。何当たり前なことを言っているんだといわれるかもしれません。しかし、それが二年前に亡くなった兄だとしたら?
何故帰ってきたのか、目的や未練があるのか、いつか消えてしまうのだろうか? 詳細もわからないまま飄々とした兄と二人で暮らす日々帰ってくる。料理上手な兄の美味しい料理と穏やかな日々。
やり取りのあちこちにうっすら漂う平穏の終りに何とも切ない気持ちになります。
「おまえ、腹減らないか?」
「あ、減ったかも」
この何気ない一言にすら愛おしさを感じてしまいます!
2.『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』ジャック・フィニイ他/東京創元社
タイムトラベルにまつわるロマンティックな物語がこれでもかと詰まったアンソロジーです。
収録作品は全て海外の作家さんの作品。初めて読む方もいるかもしれません。未来や過去、時を越えての出会いがどのように現在に作用してしまうのか。甘酸っぱさの中にスリルのようなものが混ざっているのが印象的でした。
特にこのジャンルで有名な『たんぽぽ娘』の作者ロバート・ヤングの『時が新しかったころ』がお気に入りです。
ぜひ甘酸っぱくほろ苦い作品と触れ合っていただきたいです!!
3.『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信/新潮社
名家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの塔」
メンバーの周りで起こる奇妙な出来事はいずれも魅力的。
意味が分かると怖い話のような狂気が物語の中に常にまとわりついていて物語の最後で隠れていた暗い真相を知った瞬間に鳥肌が立つこと間違いなしです!
4.『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』古内一絵/中央公論新社
秋といえば“食欲の秋”という方も多くいるでしょう。
そこでご紹介したいのは『マカン・マラン』シリーズです!
ドラァグクイーンのシャールさんが経営する夜食カフェ。元々は昼にやっている服飾店のお針子さんたちへの夜食ということで、できるだけ次の日に負担がかからないような食材を使用した料理がメニューに並びます。
悩み疲れた登場人物が、料理とシャールさんの温かい言葉に癒されるように、読み手も元気づけられる優しい作品です!
5.『三月は深き紅の淵を』恩田陸/講談社
一番好きな作家さんである恩田陸さんの中で、最も好きな作品です。
印象に残るこのタイトルは、作中に出てくる本の題名。
この本は知る人ぞ知る作者不明の本で、読むことができるのは持ち主と、持ち主が決めた一人だけ。しかも貸す場合は1晩限り、とかなりシビアなルールを強いられます。そんな不思議な本“三月は深き紅の淵を”を巡る物語。
いまの時代ならばコピーや写真を撮る、はたまたネットで転載され、気軽に読めてしまうかもしれません。しかしこの物語では、実物ではなく登場人物達が記憶を手繰り寄せて本の内容が語られます。その話の断片は子供の頃、寝る前に絵本を読み聞かせてもらったような、どこか懐かしい感覚になりました。
本編も作中の物語も魅力的な一冊で、二冊分楽しめてしまう作品です。
天木柚季さんには、“秋の夜長に読みたい本”というテーマで5作品選んでいただきました。
そこで筆者もこの秋、純文学に浸るための入門として本を1冊、紹介したいと思います。
『夜長姫と耳男』坂口安吾、イラスト:夜汽車/立東舎
これは立東舎さんが展開している“乙女の本棚”というシリーズのひとつで、文豪の名作を人気イラストレーターの挿絵で読む、どこか絵本のようなシリーズです。
『夜長姫と耳男』は坂口安吾の作品で、美しい夜長姫のために仏像を彫る耳男のお話。残酷で、どこか妖しく艶めかしい雰囲気の作品です。秋の“夜長”のお供にぜひ。
・栞さん
栞さんは、“ミステリ小説大好きVTuber”と名乗るほどのミステリー好き。
動画や配信も、ミステリー小説を語る内容のものが多いです。ネタバレ厳禁のジャンルなので語るのが難しいと思うのですが、良い塩梅で紹介してくれるのが栞さんの魅力のひとつ。
【選書のテーマ】
ミステリー小説
1.『青の呪い 心霊探偵八雲』神永学/講談社
<あらすじ>
共感覚という能力がある主人公。
彼の学校の美術室には“呪いの絵”という怪談がある。主人公がその噂を調べる青い声の少女に惹かれていく中、学校の美術室で殺人事件が起こる。
事件に“呪いの絵”が関係しているのだろうか。ある朝に偶然目撃してしまった光景が頭からはなれず、主人公は……。
<オススメポイント>
ホラーとミステリーと美しい青春がミックスされたとても贅沢な物語です! 感動しますっ!
『心霊探偵八雲』とタイトルにありますが、シリーズ本編(全12巻)を読んでいなくても大丈夫。
神永学先生の文章はとても読みやすくて読者をグングン物語の中に惹き込んでいく力があります。
ページ数は477頁と少し厚めですが、すぐに読んじゃうと思う!
2.『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵/東京創元社
<あらすじ>
妻が余命いくばくもない病気を患っていた。主治医からはここ3日がヤマだと伝えられる。落ち込む主人公の前(?)に現れたのは謎の声。なんと妻を助けるために過去に向かえというのだ。
彼は1960年にタイムトラベルし、その時代に起こった恐ろしい惨劇の場へとたどり着く。“惨劇の真相解明”――それが妻を助ける条件だった。
主人公は事件を解決して無事に妻を助けることができるのか?!
<オススメポイント>
竜泉家の一族シリーズの第一作目!
まずSF要素があるのが良い! SFと都市伝説が融合したミステリーがどんな風になるのか読むまではわからなかったのですが、最高です!
過去の事件の凄惨さにうっとりして、そしてラスト! こんなに心温まる気持ちになったミステリーは初めてでした! 自信をもってオススメします!
現在『竜泉家の一族』シリーズは『時空旅行者の砂時計』、『孤島の来訪者』、『名探偵に甘美なる死を』の三作品発売されています。読めば新しいミステリーの扉が開きます。ぜひ、順番通りに読んでいただきたい!
3.『方舟』夕木春央/講談社
<あらすじ>
大学時代の友人たちが7人で山奥の謎の地下建築に訪れた。夜も遅くなって下山するのは危険と判断しその地下建築に泊まることに。その後、3人増えて合計10人で夜を過ごす。朝になったら山を下りて家に帰ると考えていたのになんと! 地震が発生して10人は地下に閉じ込められてしまう。
死を待つしかない? そんな中で殺人事件まで。タイムリミットまでに犯人を見つけて、この不思議な建物から脱出できるのか!?
<オススメポイント>
最新の超話題作でしかもメチャクチャ面白いです! 読んでて息が苦しくなってくる! 衝撃的な展開の嵐!
この作品に関しては感想もすべてネタバレになってしまうようで怖いです(笑)。まだ読まれていない方は前知識、SNSなどで検索をせずに本を開いていただきたい!!
もしミステリ小説が好きで最近何かないかなぁって探していたら、『方舟』はかなりオススメの作品です。
4.『月光ゲーム Yの悲劇’88』有栖川有栖/東京創元社
<あらすじ>
大学サークルの夏合宿で矢吹山にやってきた、アリスたち推理小説研究会の一同。
そこで他の大学の人たちと一緒になり青春を謳歌していた。楽しい時間だった……が、3日目の朝、矢吹山が噴火し学生たちはキャンプ場に閉じ込められてしまった。
いつ石が飛んできて頭に当たって死んでしまうかもわからない、そんな状態の中で殺人事件まで起こってしまう! 一体犯人は何を考えているのか?
<オススメポイント>
学生アリスシリーズ、江神二郎シリーズといわれるシリーズの第一冊目。
アリスの先輩・江神さんが謎を解いていく探偵役。多くの探偵もの作品の中で江神さんはかなり常識人!探偵といえば変人!と思っていた私としては、そのやさしさ、常識的なところが魅力でもあります。
“読者への挑戦状”もあります! 「あなたの推理がまとまりましたら……」って言われるとゾクゾクしちゃうよね! 推理をしたい方、謎解き大好きな方にもおすすめです!
5.『暗闇坂の人喰いの木』島田荘司/講談社
<あらすじ>
横浜にある暗闇坂をのぼると、樹齢2000年の大木がある。その大木は近づく人間を飲み込んでしまうという噂が。
近くの家の屋根で、人がその大木を見ながら死んでいるという事件も発生し、周辺で起きていく謎に御手洗潔が挑んでいく!
真相に震え上がること間違いなし! 横浜だけにとどまらないスケールの大きい物語。
<オススメポイント>
The恐怖! ずっと怖い! そこが最高!!
ホラーではないのにここまで読者の恐怖を駆り立てられるって、本当に島田先生はすごいです。
近寄る人間を飲み込んでしまう大木、そんなものが本当にあるのか。あるんです!
私が書店で『暗闇坂の人喰いの木』を手に取った時「木が人を飲み込むってどんなトリック?」と穿った想像をしていました。しかし! そんな私を嘲笑うかのような最恐の結末が待っていた!
ページ数は719頁とかなり厚めだけど、ずっとこの世界に浸っていたい~って思える傑作です!
栞さんが紹介してくれた5作品はやっぱりミステリー! ということで、筆者も1冊。
『偽恋愛小説家』森晶麿/朝日新聞出版
イケメン作家と編集者である女性が主人公のミステリー小説。作家がいわゆる探偵役で、編集者が助手役であるこの作品、連作短編の形をとっているのですが、それぞれ有名な童話がモチーフになっています。その童話の解釈が独特であり、グリム童話並みのグロテスクさを放っているのが魅力的。
「恋と感傷を履き違えてはならない」というフレーズが印象に残っています。
・書三代ガクトさん
書三代ガクトさんは、筆者の知る中で最もストイックに読書活動をしていらっしゃるVTuberです。
読みたい本が見つからない、この本の感想を共有したい、そう思ったならば書三代ガクトさん
のチャンネルへGO!
【書三代ガクトさんから一言】
普段はコラボ読書会や30秒小説動画を出している猫VTuberです。
小説を愛してけ~。
【選書のテーマ】
VTuber、バーチャルを扱う小説
1.『鈴波アミを待っています』塗田一帆/早川書房
あの頃の、そして今なお続くバーチャルの熱狂が詰まった作品です。
人気VTuber鈴波アミは1周年記念配信で姿を現しませんでした。待機画面に表示される「鈴波アミを待っています」の文字を見つめながら主人公は彼女を想い、そして探していくのです。
VTuberファン視点の物語。
音沙汰もなく行方も分からない推し。供給がない中で、アーカイブを見続け、今までの彼女の姿や活躍していく様子を一つ一つ確かめていきます。
同時に示されるのは配信でしか知らない推しとの接し方、自身のあり方。
失踪というセンセーショナルなものに触れていく中で、主人公は悩んだり、暴走したり。ぼろぼろになりながらも、推しを確かに想い続けます。
また本作の舞台は2020年前後。
あの頃にあった、そして今なお続くVTuberやバーチャルの熱狂があります。
想いが重なりあっていくコンテンツと、みんなで作り上げていく世界が描かれるのです。
そして読み終えると、タイトルがより強烈に。VRライブを見終えた直後のような興奮と余韻が最高です。
VTuberが好きな方、バーチャルが好きな方はもちろん、推しがいらっしゃる方やライブコンテンツが好きな方はぜひ読んでみてくださいませ。
2.『ボクは再生数、ボクは死』石川博品/KADOKAWA
バ美肉の主人公、ハチャメチャ動画配信劇!
会社員をしている狩野忍は、世界最大のVR空間サブライム・スフィアで“世界一の美少女・シノ”をしておりました。そんな中、VR空間で高級娼婦のツユソラに恋をします。
彼女に会うためにはお金が必要。そのため配信者の斉木みやびとともに、VR空間で動画配信を始めます。炎上を繰り返し有名になっていくのです。
いわゆるバ美肉をしている主人公の物語です。現実世界では紙おむつを履き、VR世界では美少女として活動。二重写しの世界が描かれていきます。
その中でお金を稼ぐための配信活動。企画がどんどん過激になっていきます。最低限のルールやモラルでさえ破り、人を襲い、他の配信者やアンチと戦っていきます。
ツユソラに会いたい。
ただそれだけの気持ちで暴走していくハチャメチャ。いろんな人を巻き込んで、どんどんエスカレートしていく様子は思わず笑ってしまいました。
さらに「ネットとは何なのか」から死生観にまで広がっていく展開。めちゃくちゃエモいです。
インターネット、VR、動画配信。様々な要素が絡み合いながら、ふとしたとき思い出してしまうような余韻。ハチャメチャと幻想的な風景のコントラスト。美しすぎる物語です。
3.『グラン・ヴァカンス』飛浩隆/早川書房
人に捨てられた仮想リゾートでの、侵略と祈りの物語。
仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。人々の理想を詰め込んだ夏休みのリゾートですが、ゲストの人間が来なくなって1000年が経ちました。
自我を持つAIたちが変わらない永遠を過ごす中、謎の侵略者“蜘蛛”が現れ、リゾートを破壊し始めます。
周期的に現れる敵におびえがながら、AIたちはリゾートを守ろうと防衛ラインを作ります。人々の理想が詰まった夏での攻防。街も、AIも消してしまう“蜘蛛”と戦いながら、その謎にも迫っていくのです。
人のために作られたリゾート地。けれど誰にも求められなくなった夏。
そんな空間の中で生きている語り手たちは、自身の存在意義やリゾートの意味などを考えていきます。章ごとに視点を変える中で、このリゾート地に込められた願いや祈りを知ることになります。
残酷だけど美しい。残酷だからこそ美しい。
人間が作った理想のリゾート。何階層もある物語とイメージが強烈です。難解さもある1冊ですが、映像的な描写がとにかく美しい。きっと頭に浮かんで消えないシーンや思いが多くあると思います。
仮想リゾートの根幹にも触れていく続編の短編集『ラギッド・ガール』もぜひチェックしてみてください。
4.『名探偵に甘美なる死を』方丈貴恵/東京創元社
VR世界と現実、それぞれの殺人事件が絡み合う強烈なミステリ作品。
VRミステリゲームのイベントに参加した加茂冬馬。イベントに集まった人たちとゲームを楽しんでいる中、VR世界、現実世界、それぞれで殺人事件が起きます。
二重写しの舞台で、2つの事件が同時並行的に描かれる特殊設定ミステリです。
本作は『竜泉家の一族』シリーズの3作目。1作目ではタイムリープ、2作目では謎の異形など、特殊設定とロジカルなミステリが楽しめる作品群です。
そして3作目『名探偵に甘美なる死を』はVRゲームを扱ったミステリ。1作目、2作目の主人公やキャラが活躍していきますが、既刊謎解きのネタバレはありません。
ヘッドセットをかぶり、ミステリゲームに興じていく中、現実世界とVR世界、それぞれで殺人事件が起きます。
状況やルールが少しずつ違う二つの世界。現実での出来事がVR世界での証拠となり、VR世界のやりとりが現実でのヒントになる。それぞれが状況を証明したり、否定したりと、複雑に絡み合っていきます。
さらにこの舞台だからこその犯人像。
VRに詳しい方、そして楽しまれている方こそ触れていただきたい1冊です。特殊設定だからこその事件と、丁寧かつ驚きに満ちたロジックを楽しんでみてください。
5.『アメリカン・ブッダ』柴田勝家/早川書房
収録『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』
生涯、VR機材を付け続ける少数民族の夢と世界が強烈な短編。
最新の科学と民俗学が融合したSF短編集『アメリカン・ブッダ』。
いくつかVRを扱った作品もありますが、1編目『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』はVR民、必見です。
雲南省スー族の文化をまとめた論文調の小説。
生まれてからVR機材をつけ、生涯を終える少数民族の話です。
祭りやイベント、そして対話を通して、彼らが見つめる、ここではない世界に思いを馳せていきます。
この民族を成り立たせているシステムや概念がとても面白いです。例えばVR世界で生きている彼らにはそれぞれ生命活動を支える付き人がいます。傍らから見ると奇妙な関係ですが、それを支える文化や思想の尊さが垣間見えます。
他にも、成長とともにVR機材を取り替える儀式が印象的。その瞬間、彼らは普段の世界と異なる世界に出会います。その間で揺れ動く世界と思想が強烈でした。
また雲南省スー族を調べる語り手たちは、彼らがいるVR世界を見ることができません。
彼らが独自に作り、共有している世界とイメージ。断片的に描かれる世界に触れ、語り手の世界が少しずつ揺らいでいきます。生や死なども大きく拡張されるような快楽がある短編でした。
表題作『アメリカン・ブッダ』もVR世界を扱った作品です。こちらもよければ読んでみてください。
書三代ガクトさんからは“VTuber、バーチャルを扱う小説”というテーマで5冊選んでいただきました。
ということで筆者も同じテーマで1冊、選んでみたいと思います。
『虹を待つ彼女』逸木裕/KADOKAWA
死者を人工知能化するプロジェクトに参加した研究者が、人工知能モデルとなった女性に恋をしてしまうお話。プロジェクトがプロジェクトなため、恋した女性はすでに亡くなった人間です。しかも彼女の死には謎が多く、調査の過程で主人公は「調査を止めなければ殺す」と何者からか脅迫を受けます。
絶対に実らない恋、そしてサスペンス。人を愛するとはどういうことか、今一度足を止めて考えてしまう作品です。
・夢ノ語部さん
夢ノ語部さんは読書会やゲーム配信、企画立案などを中心に活動されているVTuberです。
特に企画の部分はいちライターとして非常に学ぶものがあります。
【夢ノ語部さんからから一言】
9月4日に息子が産まれました。はちゃめちゃにかわいいので配信が少なく、いつ出来るか不透明なのですが、そのうち息子自慢配信をします。世界一かわいい息子自慢配信をします。ぜひチャンネル登録してください。
【選書のテーマ】
VTuberが書いた本
1.『月ノさんのノート』月ノ美兎/KADOKAWA
VTuber界のトップシーンを走る、にじさんじの委員長・月ノ美兎さんの初エッセイ集。
月ノさんが書いた“なんでもノート”を拾った読者がノートの中を覗き見ることで心の内に迫る……というあらすじで、ファン向けな内容のエッセイ……と思って僕は読み始めたのですが、これは良い意味で裏切られる本でした。
僕自身がVTuberとして活動する中で、格好つけてしまう所があったりします。大体の人は、何か表立って表現する時にはそうなってしまうのが普通だと思います。
しかし本書ではこれでもか、と格好悪い所をまざまざと隠さず見せてくれます。嫉妬に失敗に考えなし、それが軽快かつ面白い文体で人間の魅力を高めています。
何故このエッセイが「ノート」なのか。読んだ後はそんな事まで考えてしまう、楽しみ尽くせる一冊です。
2.『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』バーチャル美少女ねむ/技術評論社
世界最古の個人系VTuber・バーチャル美少女ねむさんの本で、これから時代を作っていく“メタバース”に関する、利用者の実感に一番基づく本です。
僕がVTuberの活動の中で“メタバース”が流行ったからと、『VRChat』を使用した企画書を書いた事があるのですが、『VRChat』のベテラン利用者から「これではVRCユーザーからの協力は得られない」と言われた事がありました。
そこで、外から見た“メタバース”と内から見た“メタバース”の差異を感じていました。
“メタバース”に関する情報は今の世の中、多く溢れていて、企業によっても“メタバース”の要件、意味が異なっており、統一されていません。
その中で『メタバース進化論』はユーザーとしての視点、体験を大切にしていて、本来は経験しないと分からない事を丁寧に読者に伝えてくれています。
中でも1200人のユーザーに国勢調査と称したアンケートの中身は必見で、バーチャル世界でのユーザーの属性や、スキンシップ、バーチャルセックス体験者など、生々しい実情を本を通して見る事が出来ます。
僕がこの本を今オススメするのは、この本が今現在(正確には2022年2月の情報)を元にソーシャルVRの実情を書いてくれている所で、“メタバース”は凄まじい速さで変化してきている界隈ということです。
はやければ3年後にはガラッと現実が変化している可能性があります。
今この本を読むことで、これからの未来がどう変化していくのか、「あの本にはこんな事を書いていたな」だったり、「体験してみると読むだけとは違うな」だったり、人生がほんの少し面白くなる一冊です。
3.『ゾンビ学』岡本健/人文書院
近畿大学准教授、VTuber「ゾンビ先生」としても活躍されている岡本健先生の本。
ゾンビを通して、社会背景や影響を学んだり、もちろん様々なゾンビに対する考察など、様々な視点を得る事が出来る1冊です。
ゾンビというコンテンツに、現代で触れた事がない人はいないのではないでしょうか。古いコンテンツも触れやすい環境が整っているため、古い作品を見ている方も増えてきています。
しかし、そうすると新古の時系列が分からないままに見て、少し作品を楽しみづらかったという経験を味わった方も多いのではないでしょうか。もちろん、コンテンツをコンテンツのまま楽しむのもアリなんですが。
しかし、ゾンビ作品をより深く楽しみたい、という方には、間違いなくその道しるべになってくれる本です。
ゾンビというコンテンツは今後も増殖し、触れずに生きていく事は難しく、またハマってしまえば抜け出す事の難しい魅力的な世界です。
かゆい(ところに手が届く)
(情報が)うまい
ゾンビ学を学んで、視野を広げて楽しんでみませんか?
4.『ぴのらぼ おいしい虫さんたち みんなでやりたい虫クイズ』著:カルロ・ピノ、イラスト:八重沢なとり/KADOKAWA
.LIVE所属のカルロ・ピノさんが書いた児童書。韓国語版、中国語版まで発売されているベストセラー本。
この虫クイズ自体が、知らない話も多く大人も子供と一緒に愉しめるような内容になっています。
実は、この本をオススメするにあたって、一番大切なのが“虫がすべてイラストで描かれている”ところなんです。
僕は個人的にこの本を、子供のいる友人にプレゼントした経験があります。子供は虫が好きなのですが、親が虫嫌いでダメだと言った為です。
この『ぴのらぼ』は、そんな親子でも楽しめた本です。
他の友人でも、子供の頃に読んだ虫図鑑の写真がトラウマで、今も虫嫌いだという人がいます。
『ぴのらぼ』では、リアル過ぎたイラストをボツにしていたぐらい、子供の“好き”を大切にして寄り添ってくれている児童書です。
私事ですが、私も最近息子が産まれたので、そのうち子供と一緒にこの本をまた楽しみたいと思っています。一生に残る、お宝のような何度も読み返す本になることでしょう。
続巻では『ぴのらぼ 絶対に見つからないいきものさん 隠れているやつらを見つけだせ!』、『ぴのらぼ キミの町にも恐竜、いる?』が発売されています。
5.『好きな人を幸せにする能力』【一話完結】月兎耳のべる/ハーメルン
こちらは小説投稿サイト“ハーメルン”に投稿されている短編小説です。収益化前の個人VTuber・月兎耳のべるさんの作品です。ハーメルンを見ている人は知っている作品かもしれません。
発表当時、オリジナル作品の中で短編にも関わらず日刊で連続1位、またオリジナル累計1位(当時)を誇った作品です。現在でも短編作品として圧倒的な高評価を得ています。
苦しくて、美しくて、泣いてしまう心に沁みる作品です。
何度読んでもボロボロボロボロ泣いてしまう作品で、でも気持ちよく終わってくれています。短編で無料なので、ぜひ一読してみて下さい。
無料……。なんで書籍化してないんですか???????(クソデカ感情)
夢ノ語部さんから、“VTuberが書いた本”というテーマで5作品選んでいただきました。
それでは早速、筆者も同じテーマで選んでみたいと思います。
『人外教室の人間嫌い教師』来栖夏芽/KADOKAWA
ちょっと王道すぎるかなと思いつつ、それでも選ばせていただきたい作品です。
にじさんじ所属の来栖夏芽さんのデビュー作であり、現在2巻まで発売、コミカライズもされています。
人外が人間になるための学校で、トラウマから人間嫌いになってしまった主人公が教鞭をとるお話なのですが、これ、完全に“ラノベ”です。ライトノベルの特徴のひとつとして、キャラクターひとりひとりに個性がありキャラ立ちしている点があります。この小説はまさしくそうで、生徒たちがそれぞれ“人間になりたい確固たる理由”を持っており、主人公がちょっと黒子っぽいのもラノベだなと。
青春系ライトノベルが好きな方にぜひおすすめします。
以上で、全てのおすすめ本の紹介が終了致しました。
気になる本は見つかりましたでしょうか。筆者にとっても収穫の多かった企画でございました。(読みたい本リスト更新の音)。
皆さまの読書ライフがより充実することを祈っております。
今回、おすすめ本リストをくださった4名の配信、動画もぜひご視聴ください!