
怒涛の勢いで変化するシーンの中で、他とは比せぬオリジナリティを発揮しながら進化を遂げ続ける異能のクリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」所属アーティストのリレーインタビュー第4弾は、シンガーとしての歌唱のみならず、イラストレーターとしてアートワークも担当、時にはナレーションもこなすなど様々な領域へ創作の翼を広げるヰ世界情緒をお招きした。
「今までは作品を完成させて終わりだった。」そう語るほど純粋に創作に打ち込む生粋のクリエイターであった彼女だが、ヰ世界情緒として歩んだ2年の旅路はただでさえまばゆく輝く彼女のクリエイターとしてのこだわりにある変化を引き起こしていた。
初のワンマンとアルバムリリースを経た今語られる創作への情熱とファンへの愛情、超個性派集団の中にあって、なお絶対的な存在感を放つヰ世界情緒が愛する世界の秘密とは。
わたしが描く理想のキャンバス
――2021年10月には待望の 1st ONE-MAN LIVE「Anima」を開催されました。ハッシュタグ「#ヰ世界情緒Anima」が世界トレンドにも入るなど大きな盛り上がりを見せましたが、改めてライブの感想をうかがえますか?
ヰ世界情緒 あんなにたくさんの人にライブを見てもらえると思わなくてビックリしたのが正直な感想ではあるのですが、逆にこんなにもたくさんの人にわたしの歌が届いてるんだという実感を得ることもできました。
今まではなかなか人前に出る機会もあまりなかったですし、思っていることを発信する場もほとんどなかったので、遂にみたいな感覚もありました。少し真面目なこともMCでは話させていただいたんですけど、歌以外の部分もみなさんがしっかり受け取ってくださっていて、気持ちが繋がっているように感じられたのはやはり感動的でした。
――リアルバンドとの共演やダンスの披露、アンコールからの怒涛の展開など見所はたくさんありましたが、個人的なハイライトはどのシーンですか?
ヰ世界情緒 いやーもう全部ですね(笑)! 背景映像もひとつひとつとても魅力的なものをつくっていただいて、感無量でしたし、変身シーンなんて、もう…すごくて。バンドの皆さんの演奏も、とにかく素晴らしいとしか言いようがなくて、本当に記憶に残る素敵なステージをたくさんの方々と一緒につくることができて、感謝の気持ちしかないです。
ダンスについては、わたしはレコーディングの時に歌っていると結構動いてしまうタイプで、これをライブでも表現できたらいいなと思って振り付けしてみたので、思いっきり動けてよかったです!
「いろはに咲きて」は振り付けをしていただいたのですが、ライブを見ている人たちに楽しんでもらえるようにいろいろ細部までこだわって挑んだので、そこも伝わっていたら嬉しいですね。
――今回のライブを通じて、活動開始から掲げている「自らの歌と創作で世界を表現する」という目標へ繋がるような手ごたえは得られましたか?
ヰ世界情緒 ヰ世界情緒はもちろんわたし自身でもあるんですけど、同時にたくさんの人とつくる世界みたいなものでもあるのかなと思っていて。もちろんわたしも一緒に形作っていく、そんないろんな側面を持っているものだと思っていて。今回のライブを通していつも応援してくださっている皆さんに、音楽を通してその景色を届けられたのが嬉しかったですし、わたし自身も目標に少し近づけたかなと思っています。
――公式サイトの紹介文にある「”ヰ世界情緒”というキャンバス」という記述も印象的です。歌唱だけでなく自らアートワークを手掛けることもあるヰ世界情緒さんだからこその表現なのかとも感じました。
ヰ世界情緒 ”キャンバス”という言葉は運営さんから言っていただいたものだったんですけど、確かにやりたいことを描いていく、叶えていく存在という意味ではいい表現だなって思っています。歌唱だけでなくイラストなども描かせていただく中で、自分の作品として世の中に発信するときに、緊張感や難しさを感じたりすることもありますが、逆に関わる領域が多い分ダイレクトにわたしの思っていることを伝えることができるとも思っていて、そこにはクリエイターとしての喜びみたいなものを感じますね。
――ナレーションや声優などにも挑戦されていますが、そうした異なる表現に挑む上で意識やモードが変わるような感覚はあるのでしょうか?
ヰ世界情緒 内面的な部分では大きく違いがあるわけではないのですが、絵でも歌でも、最終的にはこういうことを伝えたいっていう抽象的なものは似通っていて、場合によっては絵と歌を組み合わせて解像度を上げてみたり、まだまだ新しいことは模索しているような感覚ですね。
自分が思っていることをより深く伝える為にどうすればいいかは、常に考えていて、その為に新しいことを模索しながら自分自身の創作の幅を広げていきたいと思ってます。たとえば最近は声優やナレーションに挑戦させていただいたのですが、自分でつくったお話やキャラクターに、自分で声をつけてひとつの物語や映像にしてみるのも面白いかもしれないなと思っています。表現方法も伝えたいことも、他にも面白そうだと思ったことはできる限りやっていきたいなと思っています。
誰に届けているのかを考えるようになった
――デビューしてからの2年を振り返って印象的だった出来事はなんでしょうか?
ヰ世界情緒 やっぱりライブは大きいですね。いつも応援してくださっているみなさんに、自分の歌だけでなく、今まで思っていたことも届けられたのではないかなと思っているのですが、わたしだけでなく、みなさんにとっても大切な思い出になっていたら嬉しいですね。
あとはデビュー日もとても思い出深くて、緊張がすごくて震えが止まらなかったのをよく覚えています。
――考えていることをしっかりと伝えてくださっていますし、ここまで非常にスムーズに取材させていただいているので少し意外です。こうやって意志をハッキリと言葉にできるようになったのはデビューしてからの変化なのでしょうか?
ヰ世界情緒 ちゃんと今日話したいことはメモしてきたからかもしれないです(笑)! でも確かに活動をつづけていくうちに変化した部分なのかなとも思っています。
今までは作品を発表することはあってもわたし自身の想いや考えが前に出るということはあまりなかったこともあって。なので作品は完成させたら終わりというような感覚だったのですが、活動を続ける中で受け取って下さる方々のことや、誰に届けるためにつくるのかを考えるようになりました。
わたしの歌を聴いて喜んでくださる人がいるんだと思えることが嬉しくて、つくったものをどんな人が受け取ってくださるのかと想像するようになったのはこの2年での変化というか、成長なのかなと思っていますし、その意識の変化がいろんなところに影響を及ぼしているのかもしれません。
昔の自分だったら絶対に言わなかったようなことも言うようになったなと思うことがあるのですが、それはやはり観測者のみなさんとの信頼関係ができたからこそなんだなと思っていて。そうやって自分でも知らなかった自分に出会ってドキッとすることがいまだにあって、観測者のみなさんのおかげで刺激的な日々を送れているのかなと思います。
――自分でも知らなかった自分に出会う瞬間は最近にもありましたか?
ヰ世界情緒 この前のライブで、観測者の皆さんに「大好きだよ」「頑張れ」というようなメッセージを言っちゃったのですが、今までのわたしは「大好きって言ったら相手は嫌かもしれない」とか「頑張れなんて上から目線っぽいかな」とか、自分の思っていることを伝える前に受け取ってくださる相手のことを必要以上に考え過ぎてしまってなにも言えないことが多かったんですよね。
でも観測者の皆さんに今なら真っ直ぐ届けられるんじゃないかって思って、本当にふと口から出た言葉ではあったのですが、「わたしってこんなことが言えるんだ」って驚きましたね。
ライブの直後はさすがに自分で自分にびっくりしすぎて、なんであんなこと言っちゃったんだろうって少し不安になっていたのですが、後からいただいたコメントを見てみたらみなさんがしっかりわたしの思いを受け止めてくださっていたことが分かって、わたし自身も救われた気持ちになりました。
――とてもいい意識の変化が訪れていたようですね。
ヰ世界情緒 「歌ってみた」に関しては、自分が歌って楽しい、嬉しい曲を選ぶようにしているんですけど、最近はそれだけじゃなくて聴いてくださる方々の顔が浮かんで、「喜んでくれるかな」なんて思ったり。そんなことも考えるようになりました。
絵を投稿する時も、みなさんに早く見てもらいたいっていう気持ちが芽生えるようになって、すごいワクワクするようにもなりました。気持ちが大きく変化しているのかなって自分でも感じますね。それはやっぱりライブを経て更に強くなったんだと思っています。
――となると、発表したものをファンの皆さんがどう受け止めているかを確認するためのエゴサも積極的にされるのでしょうか?
ヰ世界情緒 そうですね。自分自身に置き換えて考えても、わざわざ思っていることをTwitterでつぶやいたり、動画にコメントをしたりするって、やっぱり本当に好きじゃないとできないことだと思うんですよね。そうやって思いを示してもらえることはとても嬉しいですし、愛に応えたい! もっと頑張ろう! ってモチベーションにもなります。
制作で迷ってる時は気持ち的にまいっちゃうことがたまにあって、こんな絵を見せても誰も喜ばないんじゃないかとか思っちゃったりもすることもあって。
でも以前、色紙いっぱいに観測者の皆さんがコメントを書いてくださった、寄せ書きみたいなものをいただいたことがあって、もしもみなさんがわたしの隣にいたら、「頑張れ」って応援してくれるのかなとか、わたしの絵を見てきっと喜んでくれるんだろうなって思ったら心が温かくなったんですよね。
ファンアートを描いてくださる方もたくさんいらっしゃるのですが、ファンアートを描くことがどれだけ大変なことかと思うと、どれだけ愛が込められているかが伝わってきて。そうやってひとつひとつの言葉であったり、絵だったり、様々な形で伝えてくださる気持ちはとても大事なものなので、しっかりと受け止めたいなと思っています。
――歌唱やイラストなど様々な表現に挑みながらも、その中で表現しようとしているメッセージには一貫したものがあるように感じられますし、先ほどそのようにもお話しいただきましたが、改めてあらゆる創作に挑む上で貫いているこだわりについてうかがえますか?
ヰ世界情緒 わたしは人の暮らしの中や世界に散らばっている色とか記憶、空気みたいなものがすごく好きで、歌う時であればその曲の世界に入り込んで、絵を描く時であれば自分の感じる世界の空気を強く切り取れるかを意識しています。音楽にしても絵にしてもひとつひとつの作品には全部異なる世界、空気があって、それを自分がどう表現するかにこだわっています。世界そのものが本当に大好きなんです。
――具体的にはその空気を表現するためにどのような工夫をされているのでしょう?
ヰ世界情緒 たとえば音楽の場合は、楽曲を聞いた時に思い浮かぶ映像だったり、その世界の空気の重さみたいなものを想像して、どこに立ってどうして歌っているのかをできるだけ思ってから歌うようにしています。その中で自然に出てくるものを大切にしながら思いを馳せることで、より深くその曲の世界に入り込んでいけると思っています。元々そうやって想像したりするのが好きなので、その中で思ったり感じたりすることの延長線上にいるような感覚ですね。
“ヰ世界情緒”という在り方
――レーベルメイトのみなさんとのグループ「V.W.P」での活動も増えていますが、一人で様々な表現に挑むヰ世界情緒さんとしてはグループでの活動にはどのような意義を感じられていますか?
ヰ世界情緒 五人だからこそできること、一人で歌っているだけではわからないことや受けられない刺激をもらえるのがグループで活動する魅力だと思っています。みんなを頼りながら一緒に成長して、もっと大きなものをみなさんに届けられるようにって意識で活動していて、それを直接言葉で共有したりはしないんですけど他のみんなも思ってることは一緒なのではないかなって感じています。
今はグループとしてどうやっていこうかって考えながらやっているというより、一緒に歌うことやみんなで一緒にいられることを楽しんでるっていう感じで、その中で得たものを持ち帰ってそれぞれ個人の活動に活かしたりしているという感覚です。
――いままでリレーインタビューで聴いている限りでもそこは確かにみなさん共通の意志をもっていらっしゃるようです。加えてそれぞれのメンバーについての印象についてもうかがえますか?
ヰ世界情緒 花譜ちゃんは、わたしと似ているんですよね。どう似てるかっていうと難しいんですけど、好きなものが似通っていることが多くて、わたしがメンバーのみんなにオススメした「ピクミン ブルーム」に一番ハマってくれたのは花譜ちゃんでした(笑)。逆に花譜ちゃんがオススメしてくれた漫画にわたしがハマったりすることもあるので、そういう感性が似ているのかなと思っています。
理芽ちゃんはすごく可愛い人です。お茶目だし、一緒にいると元気が貰えるというか、ずっとそばにいたいなって自然と思わせてくれるハッピーなパワーを持っている人だと思っています!
春猿火ちゃんとは性格的には正反対で、わたしはのんびり屋で春ちゃんはせっかちさんなんですけど、なぜかすごい気が合うんですよね。よく一緒に遊びにいくんですけど、どこに行っても楽しく過ごせるし、春ちゃんのことはいくらでも話せる気がします(笑)。
幸祜ちゃんとも合うんですよね(笑)。みんな合ってしまう…。すごいほわほわしているんですけど話しやすくて、まったりしてるかと思ったらすごく周りのことを見ている人なので、素敵な大人って感じがしますね。
「V.W.P」はあらゆる方面の天然さんを連れてきました! みたいなグループなんですけど、そうやって奇跡的なバランスで成り立っているからこそ、みんな仲良しなのかなとも思います。みんな一緒にいると幸せになれる大好きな人たちです。
――12月8日には1st ALBUM「創生」をリリースされました。ライブでも披露されていたリードトラック「霞がついてくる」や、今まで発表された楽曲も収録され、”ヰ世界情緒”の世界観が詰め込まれた非常に密度の高い一枚となっていました。
ヰ世界情緒 一言では言い表せない感情や、言葉では伝えられないものを込めた楽曲が「創生」は多いのですが、そうした不確実だけど確かに伝えたいことが歌でしっかりと伝わるアルバムにしたいと思ってつくったアルバムです。たくさんの人とつくりあげたヰ世界情緒のこれまでとこれからが詰まった内容になっているので、一緒に思いを馳せていただけたら嬉しいですし、みなさんの心に寄りそう一枚になってたらいいなと思います。
――本日はありがとうございました。アルバムのリリースに加え作品展の開催など、これまでの集大成的な催しのつづく大きな節目を迎えているかと思いますが、最後にヰ世界情緒の追い求める理想のアーティスト像についてうかがえますか?
ヰ世界情緒 いろんな側面を持ったヰ世界情緒という在り方が、アーティストというか、新しいマルチクリエイトの形になれたらいいなと思っていて、まずは自分自身がそれを体現できるように活動に力を入れていきたいと思っています。まだ伝えたいことはたくさんあるので、表現をより深めたり新しい分野へ踏み出していくためにももっといろんなものをつくっていきたいです。
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